
2024年秋からARGOLF Japanでは米国CALIBER社の製造するホッケーグリップを採用したモデルを発売しました。その経緯について今回はお話しさせていただきます。
ARGOLFの会社としてのコンセプトを一言で表す言葉として「Feel the Difference:違いを感じる」というもので日本ではさらに「パッティングを科学する」というものを追加してARGOLFの存在価値をアピールしています。
その中でARGOLF Japanの代表の岩田直樹は2023年のPGAショウで「CALIBER GOLF(キャリバーゴルフ) 」という奇妙な形をしたグリップ持ち込んだ新規参入のブースを見つけアイスホッケーのグリップからヒントを得て開発された樹脂製のロンググリップに強い興味を示しました。 興味があった部分はその開発意図です。
ホッケーグリップ開発の背景 Development Background

どのようなことからパターの長さの80%近くをグリップで覆ってしまうようなグリップが開発されたかというと、開発者のチップとティム・ライト兄弟は、生まれながらにしてホッケーとゴルフの才能を持っていました。彼らの祖父母は、1929年にミルウォーキーで始まったジュニアゴルフプログラムの初期メンバーでした。その後、祖父は街で最初のユースホッケークラブを設立する上で重要な役割を果たしました。それから約100年が経ち、チップとティムが自分たちなりの方法でその伝統を受け継いでいるのは、ごく自然なことのように思えます。
父親がウィスコンシンの冬と夏を愛していた影響で、チップとティムも冬は氷上で、夏はゴルフコースで過ごすようになりました。そして多くのゴルファーがショートパットに不安があったり上手く打てない状況を知った中で、自分達が慣れ親しんだホッケーのスティックの形状とその握り方からヒントを得て、2018年、ティムはホッケーのスティックのグリップをゴルフのパッティングに応用できるのではとひらめきました。
試作したグリップは、彼のプレーに良い影響を与えました。そして、兄弟で協力しながら改良を重ね、ゴルフのルールに適合した世界初のシャフトと一体型のパターグリップを開発しました。そして2021年、兄弟が開発した「キャリバー」のパターグリップが正式にゴルフルールに適合していると認められ、ゴルフの世界に新たな変化が訪れました。チップとティムは、より自然で安定したパッティングの感覚を生み出す方法を見つけたのです。彼らは、ホッケーとゴルフという共通の情熱を形にし、2023年のPGAショーで「CALIBER GOLF」としてゴルフ業界にデビューしたのです。

なぜARGOLF Japanは
このグリップに興味を持ったのか
ARGOLF Japanは会社設立と同時にパッティング専用のスタジオを東京都渋谷区の恵比寿に設けARGOLFパターの良さを伝えるのにパターフィッティングを通じて地道に広げていくやり方を続けて今日まで来ていました。その中であまりにもショートパットに悩みを持つ方が多いのに気付き、その原因を分析していたところパターの操作性の悪さが原因との結論に達しました。パター用のグリップはその形や長さそして握り方に問題があることに気づきました。その対処法として利き手の優位性を明確に活かしたスプリットグリップはショートパットの有効性にメリットがあることが分かりフィッティングにおいて実践したところ、明らかにパッティング技術の向上が確認できたのです。その結果、パター用のグリップの重要さに気づき、スプリットグリップに最適なグリップがどこかで開発していないかと探していた矢先にキャリバー社が発表したホッケーグリップに出逢ったのです。以心伝心、引き寄せの法則とはこのことを指すのかもしれませんね。
なぜホッケーグリップは方向性が良いのか
ホッケーグリップの最大の特徴は長方形に成型されたカーボン樹脂のロングタイプグリップです。なぜ方向性が良いのかといえば理由は2つ考えられます。一つはバックストローク中及びフォワードストローク中に発生するヘッドのトルク(ヘッドの重心点を中心とする回転運動)を抑えることができるからです。円形や楕円形の形状を持つ弾力性のあるグリップであればトルクの変化量は少し吸収されその変化量に気づかないことは長方形の硬いグリップの方が方向性に優れていると言えるのです。ホッケーグリップを装着したパターは重心角の大きさや重心深度の深さに関係なく安定したヘッドローテーションが得られるからです。もう一つは利き手の掌がフェイス面と同じ角度で持つことができるのでフェイス面をストローク中にコントロールしやすくなるからです。
同時にもう一つ大きなメリットがあります。グリップの全長が長いためにグリップの下部はパターの釣合点近くまであることから距離に応じて利き手の位置を変化させてヘッドコントロールが容易にできるメリットは大きなものです。利き手の位置をパターの釣合点近くまで下げると、プレイヤーの上半身はほぼ地面に対して平行になります。そのような状況下ではターゲットラインに対してヘッドの軌道はストレートになり方向性が格段に上がり4フィート以内のカップイン率が大きく上がりショートパットの不安が解消されるからです。
ホッケーグリップがもたらすもの
ホッケーグリップはその価格が高いことがその普及のスピードを速くしていないのは事実です。なぜもっと手軽な価格にできないかと思う方も多いはずです。アイデアを形にするまでに数年、2021年にルールの適合化の許可を得て、製品化に辿り着き発売までに2年も費やしたことはグリップを分解してみれば納得できるものです。いかに試行錯誤してここまで辿り着いたかがわかるからです。開発までの時間がかかった費用、製造方法など多くの資金が投入されたからです。このグリップがもたらす最大のメリットはパッティングのグリップ革命と呼べるものでスプリットグリップの優位性を実証できたことです。ショットのグリップのように利き手とそうでない手の小指を重ねるようなグリップはショットには有効でもパッティングには違う方法もあることを教えてくれるからです。
ホッケーグリップはある意味第2のシャフトとも言えるものです。通常のグリップはシャフトに装着するものですが、このグリップはシャフトに接続してパターに仕上げている点もユニークです。これは開発段階でこのような形にしなければ硬くて長いグリップをシャフトに装着が難しいことからのアイデアの転換が始まったものです。そのプロセスは概ね3つ考えられます。
一つは重さの問題です。長くて硬いグリップはその総重量がどうしても重くなります。軽量化しなければ道具としての使い勝手(スウィングバランス)に問題が生じるからです。そのために素材は何を使うのかという点です。二つ目は構造の部分です。軽量化にするにはどのような構造にしたら良いのかですが、中空化をすることは容易に考えられるのですが、どのようにシャフトの軸線をグリップの中心に固定するかという点です。三つ目はシャフトをソールから10インチのところで切断するのですが、どのくらいグリップ本体に挿入し、切断部分とグリップの中心線と一致させるかという点です。

これらの課題を一つひとつ実験と考察を重ねて製品化されたのです。 時代の先端を切り開くものは常に時間と汗の結晶から生まれたもので、その価値をわかる方に使ってもらえることで良さが認知され普及が始まるものです。この考え方や、やり方はARGOLFのモノづくりと完全に一致します。
ショートパットの悩みから解放されるなら、ホッケーグリップは最適な治療薬とも言えます。
まずは試してください。その効果に驚きの声をあげると信じています。
